2025年8月、出入国在留管理庁は外国人が日本で事業を行う際に必要な在留資格「経営管理」について、現行の最低資本金500万円を、原則3,000万円へ引き上げる方針で最終調整に入りました。
制度改正は2025年内の施行を目指しており、正式な施行日については今後発表される予定です。
変更の背景:制度の信頼性を高めるために
従来、在留資格「経営管理」は以下のどちらかを満たせば取得が可能でした。
- 資本金または出資総額が500万円以上
- 日本在住の常勤職員2名以上を雇用
しかし、実際には資本金500万円のみで設立された「実態に乏しい会社」や不動産収益を狙った“在留資格目的会社”が存在し、制度の信頼性や審査の公平性が問題視されていました。
その結果、偽装滞在を避けるため、出入国在留管理庁は真に事業を行う外国人起業家を対象とする形で資本金要件などの引き上げに踏み切ったものと考えられます。
在留資格「経営管理」の現状と統計(2024年6月末時点)
2024年6月末時点で、日本国内に在留資格「経営管理」で滞在している外国人は合計39,616人です。このうちアジア出身者が37,005人(全体の約93%)を占めており、中国出身者は20,551人と最も多く、全体の約52%を占めています。
在留資格「経営管理」保持者の数は、2015年の制度改正以降に増加傾向にありましたが、近年は年間1,500人から4,000人程度の純増にとどまり、審査基準の厳格化も相まって増加ペースは緩やかになっています。
なお、日本全体の在留外国人数は2024年末時点で約376万9,000人に達しており、総人口に対する比率は約3%です。
新旧要件の比較
【資本金要件】
現行:500万円以上
改正後:原則3,000万円以上
【常勤従業員】
現行:日本在住の常勤職員2名以上の雇用でも代替可能
改正後:資本金と従業員の両方を満たす必要が出る可能性あり
【施行時期】
現行基準:現在も申請可能
改正後:2025年内に施行予定(詳細未発表)
中小企業への影響と対応策
今回の改正により、外国人起業家に求められる資金力が大きくなり、日本での事業参入のハードルは確実に高まります。
一方で、資本力と事業計画を兼ね備えた外国人起業家の増加は、質の高いビジネスパートナーとして中小企業にとっても新たな機会となり得ます。
中小企業の皆様においては、以下の対応が求められます。
外国人との事業提携や共同出資を検討中の場合、今後の資本基準を把握して事前準備を行う
自社で外国人を雇用し、将来的な起業支援を想定している場合、制度改正前の在留資格取得を促進する
国際人材戦略の一環として、在留資格「経営管理」取得支援体制を見直す
当事務所の支援内容
当事務所では、外国人起業家およびそれを支援する日本企業に対し、以下の業務を提供しています。
株式会社・合同会社の設立手続き
古物商や飲食業などの営業許可申請
在留資格「経営管理」の新規・更新申請支援
事業計画書や資金計画の作成支援
書類整備、審査対応、在留資格変更に関する各種相談
また、初回1時間の無料相談も承っております。
申請スケジュールや制度の詳細、書類の準備に関してご不明な点がございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
参照:朝日新聞 「起業家在留資格を厳格化 資本金、6倍の3000万円に 入管庁最終調整」 2025年8月4日 5時00分