日本で就労する外国人は、出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という)で定められている在留資格の範囲内で、働くことが可能です。
以下に、主な在留資格とそれに該当する具体的な職種の例を挙げます:
大きく「就労による在留資格」「身分系による在留資格」「その他特別な在留資格」に分かれます。
**専門的・技術的分野の就労系在留資格**:
「技術・人文知識・国際業務」
該当する主な在留資格は「技術・人文知識・国際業務」です。
技人国(ぎじんこく)とも呼ばれ、現在最も一般的な就労の在留資格になります。
主に大学を卒業した高度外国人を対象としており、ホワイトカラーと呼ばれる業種や、技術者が該当します。
例えば飲食店のホール業務、工場のライン作業などの単純作業とみなされる仕事はこちらに該当しません。これらの業務は、2019年に創設された新しい在留資格が該当します。(→後述「在留資格「特定技能」」)
具体的な職種としては、
「技術」:機械工学等の技術者、IT関連の技術者、システムエンジニア等のエンジニア
「人文知識」:企画、営業、経理などの事務職
「国際業務」:通訳・翻訳、英会話学校などの語学教師、デザイナー
などが該当します。
「技術」「人文知識」「国際業務」の3つをあわせた総称で、在留資格「技術・人文知識・国際業務」と呼ばれます。
<原則要件>
技人国は「大学以上卒業」の学歴があり、さらに大学で学んだ分野と日本での職種が一致することで、取得できます。
例えば、機械工学の技術者として働くなら、大学(大学院)で機械工学を学んでいる必要があります。
機械工学が専攻であればベストですが、必ずしも専攻でなくても、機械工学関連の単位をいくつか取得していれば可能性はあります。
大学の卒業証明書に加え、成績証明書も取得し、詳しい専攻内容等を証明します。
<その他要件①>
また、大学を卒業していない場合でも、該当職種での「10年以上の職務経験」があれば、技人国を取得できます。
この場合、必ず「10年以上の職務経験」の証明を行います。
過去に働いていた会社に「証明書」を出してもらう必要性があり、万が一倒産していたり、連絡がつかないなどで証明ができない場合は取得できません。
例外的に、「通訳翻訳」は、「3年以上の職務経験」で取得可能になります。
<その他要件②>
日本で専門学校を卒業している場合で、専門学校で学んだ分野と職種が一致する場合も、取得が可能です。
ただし、大学卒業者よりも厳密に専攻内容との一致が求められます。
技人国を取得できる職種は、上記のような技術者やホワイトカラー職種に限られるため、それらの職種と一致する専攻内容である必要があります。
また、「日本の専門学士」を取得している必要があり、海外での専門学校卒業では要件を満たさないため注意が必要です。
専門学校の卒業証明書、成績証明書を提出し、証明します。
<その他要件③>
大学を卒業していれば、「通訳」「翻訳」として働くことができます。
この場合は、大学での専攻内容は問われません。
大学は、母国の大学でも、日本の大学でも、どちらでも構いません。
技術・人文知識・国際業務以外の就労系在留資格について
在留資格「高度専門職1号・2号」
非常に能力の高い外国人を対象とし、大学レベルなどが盛り込まれたポイント制度で該当の点数を満たすことで申請できます。
配偶者の就労、親の帯同、永住許可要件の緩和などの優遇措置があります。
例外的に、業種をまたいで複合的な業務を行うことが出来ます。
1号
イ:高度学術研究活動・・・研究、研究の指導など(例:大学の教授や研究者)
ロ:高度専門・技術活動・・・自然科学、人文科学分野で知識や技術を要する勤務(例:企業で新商品の開発を行う、国際弁護士)
ハ:高度経営・管理活動・・・事業の経営、管理職(例:グローバルな事業展開を行う企業等の経営者)
在留資格「経営・管理」
経営者または、管理職として会社や店舗の経営を行います。
経営・管理を行う専門の在留資格のため、例えば自身が経営する店舗であっても実際に販売員やホール従業員として立つことはできません。
実質的な経営のみを行い、店舗営業等の場合は別途従業員を雇う形になります。
在留資格「教育」
主に公立学校の英語教師(ALT)が該当します。
要件は、英語を母国語とするか、または12年以上英語で教育を受けていることになります。
在留資格「企業内転勤」
海外にある会社で勤務している外国人が、同じ会社の日本支社の従業員として働くために日本に来る場合に該当します。
業種は、事務または通訳翻訳等になります。
「技術・人文知識・国際業務」とは異なり、学歴は問われません。
1年以上勤務していることが条件になります。
在留資格「技能」
外国料理専門店のコックさんが該当します。
技能経験10年以上の証明が必要です。(例外的に、タイ料理のみ5年以上で可)
例:インドで10年調理師をしていた方が、日本のインド料理専門店のコックさんとして働く
注:
「専門的・技術的分野の在留資格」には、その他、「教授」、「芸術」、「宗教」、「報道」、「介護」、「興行」、「法律・会計業務」、「医療」、「研究」、「特定技能」が含まれます。
「特定技能」については、下記にて後述します。
外国人労働者の総数182万人のうち、約47.9万人がこの「専門的・技術的分野の在留資格」カテゴリーに該当し、全体の26.3%を占めています。
(※1 令和5年1月27日発表 厚生労働省ホームページ 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)参照)
技術・人文知識・国際業務も、他の就労資格も、規定内の業務のみ行うことが出来ます。
在留資格に定められている範囲外の業務を行うことはできません。
**身分に基づき在留する者**:
永住者、日本人の配偶者や実子、定住者(日系人等)、が含まれます。
これらの在留資格は在留中の活動に制限がないため、日本人同様に様々な分野での仕事をすることが可能です。
雇用企業側から見れば、最も雇いやすい在留資格と言えます。
就労系の在留資格では、在留資格別に定められた職種・業務内容しか行えないのに対して、身分系の在留資格では現場作業や単純労働も含めた様々な職種が対象であり、業務内容を横断して行うことも可能です。
外国人労働者の総数182万人のうち、約59.5万人がこのカテゴリーに該当し、全体の32.7%を占めます。
**技能実習**:
技能移転を通じた開発途上国への国際協力が目的とされています。
近々大きな改正を予定されており、在留資格「特定技能」への移行を見越した新制度「育成就労制度」への変更が検討されています。 (このニュースについて詳しくはこちら 2023.12.14現在)
約34.3万人がこのカテゴリーに該当し、外国人労働者の総数の18.8%を占めています。
主に、現場仕事などの業種が該当し、現地の政府機関や「監理団体」との契約が必要であり、またさまざまな制約等があることから、通常の雇用形態、募集形態とは現状異なる在留資格となっています。
**特定活動**:
EPAに基づく外国人看護師・介護福祉士候補者、ワーキングホリデー、ポイント制による優遇措置を受ける高度外国人材等が含まれます¹。
5.**特定技能**:
国内の人手不足解消のため2019年に新設された在留資格で、主に現場労働の12分野の業種が該当します。
取得要件は
①技能実習を良好に終了し、移行する
②技能試験とに日本語試験の両方に合格する
のどちらかになります。
取得した分野で規定されている業種のみ行うことが出来ます。異なる業種に就く場合は、再度試験を受けて合格することが必要です。
2023年に制度改正が行われ、特定技能1号を取得し5年経過後、試験の合格を経て「特定技能2号」を取得すれば「無期限での在留」、「家族の帯同」、「永住権を目指すこと」が可能となりました。
現在は「技能実習」との制度連携も検討が進んでいます。
対象12分野
○介護
○ビルクリーニング分野
○製造分野
○建設分野
○造船・舶用工業分野
○自動車整備分野
○航空分野
○宿泊業
○農業
○漁業
○飲食料品製造業
○外食業
6.**資格外活動許可**:
週28時間以内のアルバイトのみ行うことが可能です。
在留資格「留学生」や、「家族滞在」(配偶者や親が、技人国などの在留資格を持つ家族)を持ち、原則は就労不可だが、申請を行うことで資格外活動許可を得ることが出来ます。
ただし、週28時間以上働くとオーバーワーク、不法就労となります。
アルバイト内容は、工場やコンビニ、清掃やお皿洗い、飲食店などの単純作業なども対象となり、幅広く働くことが可能です。
風俗営業などに該当する業種は対象外となります。
以上、在留資格と職種についてみてきました。
具体的な職種や在留資格については、個々の状況により異なるため、詳細はお気軽にご相談ください。
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参考資料:
Source:
(1) 日本で就労する外国人のカテゴリー(総数 約68.2万人の内訳 …. https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/gaikokujin16/category_j.html.
(2) 厚生労働省ホームページ「外国人雇用状況の届出状況 令和4年10月末現在」
「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
(3)
特別高度人材制度(J-Skip) | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)