前項の記事で、実際の雇用手続きについて具体的にお話ししました。
再掲になりますが、
特定技能1号外国人の雇用の際は以下のような手続きが必要になります。
雇用手続きの手順
- 雇用契約書・内定通知書の作成、送付
- ↓
- 事前ガイダンス、健康診断等の入社前手続き
- ↓
- 支援計画の策定
- ↓
- 在留資格(就労ビザ)の申請・変更
- ↓
- 入社手続き(社会保険加入等、通常の雇用手続き)
- ↓
- 外国人雇用状況の届出の提出(雇用保険に加入の場合は、この届出は不要)
- ↓
- 分野別の各協議会への加入(初回のみ)
上記「支援計画の策定」について、この記事で詳しくみていきます。
受入企業は、特定技能外国人が日本で安心して働けるよう、仕事面、日常生活面、社会生活面でそれぞれ支援を行う必要があります。
雇用の際だけでなく、雇用中にも継続支援が必要となります。
支援の計画を項目ごとに詳しく記載した書類が「支援計画」であり、特定技能外国人を雇用する受入企業には、この支援計画書の作成・提出・実施が義務づけられています。
この1号特定技能外国人支援計画書は、外国人労働者が十分に理解できる言語で作成し、交付しなければいけないとされています。
1号特定技能外国人「支援計画」の内容
① 事前ガイダンスの提供(入国前)
② 出入国する際の送迎
③ 適切な住居の確保に係る支援、生活に必要な契約に係る支援
④ 生活オリエンテーションの実施
⑤ 日本語学習の機会の提供
⑥ 相談・苦情への対応
⑦ 日本人との交流促進に係る支援
⑧ 転職支援(企業側の都合で契約解除の場合)
⑨ 定期面談の実施、報告
この支援には、項目ごとに「義務的支援」と「任意的支援」があります。
義務的支援は、必ず行わなくてはいけません。
支援計画には、すべての義務的支援について記入をしなければいけません。
任意的支援は、なるべく行うべき事項であり義務ではありません。
ただし、支援計画に記入した任意的支援事項については、実施が「義務」となりますので注意が必要です。
支援計画に記載する「義務的支援」について
①事前ガイダンスの提供
入国前、在留資格の申請前に、最初に実施します。
外国人労働者が十分に理解できる言語を使用して、対面か、テレビ電話等で行わなければいけません。
書面の交付だけでは不可となります。
労働条件や契約内容、入国手続き※等について、説明します。質問にも答えなければいけません。
目安としては、新規入国の外国人には約3時間、引き続き雇用する元技能実習生には1時間以上のガイダンスの実施が必要です。
※外国人労働者は、在留資格認定証明書の受領後、現地日本大使館にてビザ発給手続きを行い、3か月以内に日本に入国しなければいけません。
事前ガイダンスで説明すべき情報
・従事する業務の内容、報酬額、労働条件
・日本で行うことができる活動の内容
・入国手続き
・保証金徴収、違約金契約の締結の禁止
・外国の機関(送出機関など)に支払う費用の額、内訳に合意があるかの確認
・義務的支援に要する費用を負担させないこと
・入国時の住居(もしくは会社)までの送迎
・住居の確保に関する支援内容(部屋の広さや設備、家賃について)
・相談・苦情の対応
・所属機関(受入企業)の支援担当者、連絡先
任意的支援(できれば説明すべき事項)
・入国時の日本の気候や服装
・本国から持参した方が良いもの、持参してはならないもの(肉、果物、植物の種など)
・日本で当面必要となる費用額と用途
・所属機関から支給されるもの(作業着など)
事前ガイダンスについての更なる詳細は、こちらの記事をごらんください。(リンク)
②出入国する際の送迎
日本に入国する際に、到着空港から住居(会社)までの送迎を行います。
また、出国時には空港まで送り届けて、保安検査場の前まで同行し、入場を見届けることが必要です。
空港名、送迎の方法について、支援計画書に記載します。
既に日本にいる外国人の場合は、不要です。(日本国内の送迎は任意的支援)
③適切な住居の確保に係る支援、生活に必要な契約の支援
<住居の確保>
・賃貸物件や社宅の情報を提供し、必要に応じて契約に同行、連帯保証人を確保する
・居室は1人当たり7.5㎡(4.5畳ほど)以上の広さを確保
(技能実習から移行の特定技能外国人が元の住居に住む場合は、寝室が1人当たり4.5㎡以上の広さを確保していれば可)
<生活支援>
・銀行口座開設の手続きの補助
・携帯電話の契約手続き補助
・電話・水道・ガス等のライフライン手続きの補助
④生活オリエンテーションの実施
日本での生活のルール・マナー、独自の文化の説明、公的手続きの同行、必要な届出を行います。
実際には入国後すぐにこれを行うことになります。
新規雇用の外国人には、最低8時間以上行う必要があります。
技能実習生等が同じ所属機関で勤務する場合は、最低4時間以上となります。
現状では、転職の際にも改めて8時間以上の生活オリエンテーションを行う必要があるため、注意が必要です。
生活オリエンテーションで説明が必要な具体的事項:
金融機関の利用方法
医療機関の利用方法
交通ルール等
交通機関の利用方法
生活ルール、マナー
生活必需品の購入方法
気象情報や災害時に行政から提供される災害情報の入手方法
日本で違法となる行為の例
所属機関の関する届出
住居地に関する届出
社会保障、税金に関する手続き
その他の行政手続き
十分に理解できる言語により医療を受けることができる医療機関
この生活オリエンテーションについての詳細は、こちらの記事をご覧ください。(リンク)
⑤日本語学習の機会の提供
・日本語教室や日本語教育機関の情報の提供、必要に応じた手続きの補助
・自主学習のための日本語学習教材の入手やオンラインの日本語講座の契約補助
・特定技能外国人との合意の下、契約した日本語教師による日本語講習の機会を提供
⑥相談・苦情への対応
・相談または苦情に対し、遅滞なく十分に理解できる言語により適切に応じ、必要な助言及び指導を行う
・必要に応じ、相談内容に対応する適切な機関を案内、手続きの補助(地方出入国在留局、労働基準監督署等)
相談に対応できる曜日、時間、相談方法、緊急時対応について支援計画に記載します。
⑦日本人との交流促進に係る支援
・地域の交流の場、行事の案内を行うなど、特定技能外国人と日本人との交流の促進支援
・日本の文化理解のため、地域の行事を案内、必要に応じて現地で説明するなどの補助
⑧転職支援(企業側の都合で契約解除の場合)
外国人本人が希望して退職する場合ではなく、受入企業側の都合で契約解除をする場合のみ、転職支援が必要になります。
以下のいずれかの支援が義務的支援となります
・所属する業界団体や関連企業等を通じて、新しい受け入先の情報を提供
・公共職業安定所、その他の職業紹介所などを案内、必要に応じて同行し補助を行う
・特定技能外国人の希望条件、技能水準、日本語能力などを記載した推薦状を作成し、適切な職業相談、職業紹介が受けられるようにする
・職業紹介事業の許可がある場合、就職先の紹介あっせんを行う
上記のうちいずれか一つに加えて、以下の全てを行う必要もあります。
・求職活動のための有給休暇を付与する
・離職時の行政手続き(健康保険や年金等)の情報提供
・倒産等で転職の支援を適切に実施できない場合、代わりに支援を行う者の確保
⑨定期面談の実施、報告
・3か月に1回以上の面談の実施(外国人と監督的立場になる者)
・上記面談の報告書を入管に提出
・労働基準法違反等があった場合、労働基準監督署やその他機関へ通報する
・入国管理法違反があった場合や外国人への不当な扱い等を知った場合は、入管へ通報する
以上が、在留資格申請と共に提出が必須となる「支援計画」に記入すべき事項となります。
全ての項目に「実施予定の有無」「委託の有無」「支援担当者または委託を受けた実施担当者」「実施方法」を記入します。
これらの支援手続きは「登録支援機関」に委託するか、もしくは登録支援機関を通さずに自社で支援を行い、自社でまかないきれない部分のみ弊所に外部委託(アウトソーシング)していただくことが可能です。
上記の支援計画のほか、在留資格の更新などの手続きも毎年発生します。
詳しくは、次項の記事をご覧ください。→リンク
弊所では、特定技能を含む外国人雇用、労務管理、在留資格についての相談を受け付けています。
初回相談は無料です。
メール、電話にてお気軽にお問合せください。
参考資料:出入国在留管理庁ホームページ「在留資格特定技能に関する参考様式(新様式)」
https://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/10_00020.html
出入国在留管理庁ホームページ「特定技能外国人を受け入れる際のポイント」
https://jsite.mhlw.go.jp/shiga-roudoukyoku/content/contents/001101375.pdf